>引用の手引き

 いろいろな文献や資料から、文章や写真などを使用して本を作りたい、とお考えの方は多いのではないでしょうか。しかし、他の人が書いた文章やイラスト、撮った写真などは、気を付けて使用しないと、著作権侵害という法律違反に当たってしまいます。逆に、きちんと条件を満たした正しい「引用」は、権利者に無許可で行うことができます。
 引用の決まりを守り、正しく著作物の利用を行いましょう。

>引用とは

d引用

 引用とは、他人の著作物を許可を取らずに使用できる「合法的な著作権の例外」のことです。

d著作物

 著作物には、書籍、音楽、ダンス、芸術作品、画像や映像、プログラム、データベースなどさまざまなものがあります。
 単純なデータのみの場合や単なる事実の項目、あいさつ文などの決まった形の定型句、アイデアのみのものなどは著作物ではありません。

>引用の決まり

 正しく引用するためには、いくつかの決まりを守る必要があります。
 引用の決まりについて、詳しく見ていきましょう。

dすでに公表されているものかどうか

 例えば、発売前の小説や発表前の論文、ごく親しい限られた人以外誰にも見せていない写真など、公になっていない著作物からの引用はできません。

d引用する必要があるか

 自分の作品を作るのに必要がある場合のみ、他人の著作物を引用できます。引用が無くても作品が成り立つ場合は、適正な引用とは言えません。

d引用する著作物の出所を明示する

 引用部分が、誰の著作物なのか、どこから利用したのかをはっきりと書かなければいけません。

d必要な範囲のみ引用されているか

 自分の作品を作る際に必要な範囲でのみ、引用ができます。不必要な部分を含めた長い文章や、不必要な画像などは、引用できません。

d引用する著作物は、改変などを行わず、元のまま利用する

 他人の著作物を引用する場合は、文章を変えたり、画像を加工したりしてはいけません。必ず、元のまま利用しなければいけません。

d自分の著作物と、引用部分の「主従関係」が明確である

 自分の著作部部分が主となり、引用部分が補足であることが必要となります。引用部分がメインとなってはいけません。

d自分の著作物と、引用部分を明確に区別する

 一見して「ここからここまでが引用だ」と分かるように表記しなければなりません。文章の引用の場合は、カギカッコでくくったり、フォントを変えたり、改行して1段下げて書いたり、斜め文字を使うなどの方法があります。

 まとめると「自分が作品を作るときに必要な分に限って、どの著作物を利用したのかを明記すれば、他人の著作物の一部を”引用”として利用することができる」ということです。

>引用の書き方

実際に、引用する際の表記の方法を見てみましょう。

d書籍から文章を引用する場合

 例えば、お手軽出版ドットコムで本を出そうとするとき、文章をメインとして本にする方が多くいらっしゃいます。その際に、他の書籍から文章を引用する機会も多いのではないでしょうか。そのため、特に気を付けていただきたいのが、この引用の表記方法です。

 ある本には、
「引用が一番該当するのは活字関係です。新聞、雑誌、書籍で一番引用が活用されている。」
(『クリエイター・編集者のための引用ハンドブック』谷井精之助、豊田きいち、北村行夫、原田文夫、宮田昇 著/株式会社太田出版/1998年12月8日発行)
 と書かれています。

 このように書籍から引用を行う場合は、
・書籍名
・著者名
・出版社名
・発行年月日
 を入れる必要があります。少なくとも、書籍名と著者名は必ず入れましょう。論文などで引用を行う際には、引用元の文献のページ数など、より細かく書いた方が良い場合もあります。

dインターネット上から文章を引用する場合

 インターネットが発達したため、ネット上で調べ物をして、その文章を利用したいという方は多くいらっしゃいます。インターネット上のホームページや百科事典から引用する場合も、書籍からの場合と同様に引用の表記を入れなければいけません。
 例えば、フリー百科事典のウィキペディアには、引用についてこう書かれています。

引用は権利者に無断で行われるもので、法(日本では著作権法第32条)で認められた合法な行為であり、権利者は引用を拒否することはできない。権利者が拒否できるのは、著作権法の引用の要件を満たさない違法な無断転載等に限られる。
(「引用」フリー百科事典 ウィキペディア日本語版 2015年6月14日(日)07:33 UTC、 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%95%E7%94%A8)

 インターネット上の文章を利用する場合も、書籍と同様に、ホームページ名とそのアドレスを記載しましょう。

d書籍から画像(イラスト、写真、グラフ、表など)を引用する場合

『サンプル装丁』お手軽太郎 著(ブイツーソリューション、2015年●月●日発行)より引用

 画像を引用する場合も、文章の引用と同様に、引用元の表記が必要です。
 また、画質の関係上でインターネット上から引用することはあまりないと思います。万が一、インターネット上から画像を引用する場合も、書籍からの引用と同様の表記が必要となります。

>写真を使用する際の注意点

 引用とは異なりますが、自分で撮った写真を使用する場合は、文章やイラストとは違う注意するべき点があります。
 写真の写っている内容です。

d人物が写っている場合

 人物の写真には、著作権と肖像権というふたつの権利が関係します。
 著作権とは、その写真を撮影した人の権利です。自分で撮影した写真の著作権は自身になるので問題ありません。肖像権とは、その写真に写っている人の権利です。

d肖像権とは

 個人それぞれが持っている権利です。他人から無断で写真を撮られたり、イラストや絵画に書かれたり、それらを無断で公表されたりしない、というものになります。
 いわゆるプライバシー権の一部として考えられています。これは、有名人・無名の一般人共通の権利です。

 つまり、人物が映っている写真を使用・引用する際は、著作権に違反しないかどうかに加えて、肖像権を侵害しないかどうかが問題となります。

d肖像権侵害にならないために

 個人が特定できないような人混みの写真などは特に問題ありません。
 特定の個人の顔や姿が認識できるような形で写っている写真など、特に、一般の人が写っている写真は、本人の許可が無いとまず使えません。

dパブリシティ権とは

 ただし、有名人の画像を使用しようとする場合は、肖像権と同様に注意するべき点があります。
 パブリシティ権とは、その人物が持っている経済的な価値を保護するためのものです。たとえば、勝手に有名人の写真を使って宣伝をしたり、商品そのものに使用したりすることは禁止されています。その人の「吸引力」を利用して、利益を勝手に得ることになるからです。

d建物が写っている場合

 また、建物などの建設物の写真を使用したい場合は、その建物が「デザイン的に特殊なものかどうか(芸術性が高いかどうか)」に注意が必要です。歴史的な建造物のように、著者の死後50年以上経っていれば問題はありませんが、一般的なビルや住宅など以外の、特徴的な建物に関しては、その建築物自体に著作権が発生することがあります。

>フリー素材について

 最近では、書籍やインターネット上で、いわゆる「フリー素材」の写真やイラストなどが多く発表されています。これらは、作成者が「自由に使っても良いよ」と許可を出しているものですが、その使用の際には注意しなければならない点があります。

dフリー素材の使用規約

 フリー素材は、それぞれの配布元で、それぞれ様々な規約があります。代表的な例をいくつか挙げてみましょう。

・個人利用OKだが商用利用はNG、個人利用も商用利用もOK、など
 個人的に使用する以外、たとえば出版・広告・商業デザインなど、ビジネス上で使うことができるかどうか、という点です。

・配布元を記載すれば使用OK
 そのフリー素材の配布元のサイトの名前やリンクを記載すれば、自由に使用できるというものです。

・インターネットはOK、紙媒体はNG
 インターネット上(ホームページやブログ、SNSなど)での使用はできても、紙媒体の書籍やチラシなどには使用できないというものです。解像度(画質)などの問題があり、紙媒体への印刷を禁止しているものもあります。

・著作権フリー
 作成者が、著作権を使わないため、どのような形でも利用ができる、というものです。

 これら以外にも、独自で規約を設定して素材を配布している人たちは多いです。フリー素材を使用する際は、その配布元の規定をよく確認して利用するようにしましょう。