eコラム21 書字方向

cあなたの原稿は縦書き?横書き?

日本語は世界でも珍しく、縦書きと横書きを場面に応じて自由に使い分けられる言語です。
新聞や文芸書は今でも縦書きが主流である一方、公用文や国語以外の教科書、ビジネス資料は横書きが標準になりました。
つまり出版物では内容・読者・デザインが合致した書字方向を選ぶことで、読みやすさと説得力を大きく向上できます。

cジャンル別:基本の「縦」「横」

cレイアウトと可読性の視点で見る“決め手”

英数字・外来語・数式が頻出するか
長い英単語や数式が頻繁に出るなら横書き一択。縦組みにすると単語が90度回転し、読み手にストレスを与えます。

図表・写真・グラフの量
図版が多い実用書は横組みの方がページを横方向に分割しやすく、視線のZ型移動に乗せて瞬時に要点を示せます。

読者世代と読書スタイル
シニア読者は新聞・文庫で慣れた縦組みを好む傾向が強く、デジタルネイティブは横書きの方が視線移動が速く読みやすいと感じるケースが多い。

“じっくり読ませたい”か“素早く理解させたい”か
眼科医の実験でも「横書きは読書速度が上がり、縦書きは精読に向く」と報告されています。

c “縦 or 横” 4ステップ診断チャート

【Q1】本文に長い英単語・数式・プログラムコードが頻出する?
  ├─ YES → 迷わず《横書き》
  └─ NO → Q2 へ

【Q2】図表・写真が全ページの3割超?
  ├─ YES → 《横書き》がレイアウト自在
  └─ NO → Q3 へ

【Q3】主な読者は 50 代以上?
  ├─ YES → 基本は《縦書き》 ※シリーズ方針などで例外を検討
  └─ NO → Q4 へ

【Q4】読者に物語性・情緒をじっくり味わってもらう本か?
  ├─ YES → 《縦書き》で没入感アップ
  └─ NO → 《横書き》で情報をテンポ良く

cレイアウトの基本と、迷った時の判断軸

綴じ方向の絶対ルールを忘れずに!
本には、「縦書きなら右綴じ(右開き)」「横書きなら左綴じ(左開き)」という大原則があります。
これは読者の視線の動きとページをめくる動作をスムーズにするためのもので、基本的にこのルールに逆らうことはありません。

類似ジャンルの本を参考にしよう
あなたの本と似たジャンルやテーマの本が、どちらの書字方向を採用しているか調べてみましょう。
そのジャンルにおける一般的な慣習や読者の期待を知る手がかりになります。

サンプルページで比較してみよう
可能であれば、本の数ページ分を縦書きと横書きの両方で組んでみて、実際の見え方や読みやすさを比較するのが最も確実です。

「どちらでも良い」場合は何を優先?
内容的にどちらでも大きな問題がない場合は、あなたがその本で何を一番大切にしたいかで決めましょう。
伝統的な雰囲気や情緒を重視するなら縦書き、現代的な読みやすさや幅広い読者へのアプローチを考えるなら横書き、という選択があり得ます。

c読者と想いをつなぐ、最適な書字方向の選び方

書字方向の選択に「絶対の正解」はありません。
大切なのは、「なんとなく」で決めるのではなく、あなたの本の特性、届けたい読者、そして伝えたいメッセージを深く考え、明確な意図を持って選ぶことです。

デジタル化が進み、読書環境も変化する現代において、従来の常識にとらわれず、あなたの本にとって最もふさわしい形を主体的に選ぶ姿勢が、ますます重要になっています。
あなたの思いが詰まった一冊が、最適な形で読者のもとに届くことを心から願っています。