自分史とは、自分自身の人生を書き記した、世界に一つだけの物語です。
これは著名な人物が自身の功績を記す自伝とは異なり、特別な経歴がなくとも誰でも作り上げることができる、あなただけの歴史書にほかなりません。
日々の暮らしの中で感じた喜びや悲しみ、考え、そして生きてきた証そのものを丁寧に綴れば、かけがえのない一冊となります。
自分史を書き始める前に、まず最も大切になるのが「何のために書くのか」という目的を定めることです。
この目的こそが、あなたの執筆作業を導く羅針盤となります。
その目的は人それぞれですが、大きく三つに分けられます。
一つ目は、自分自身の記録として、また人生の記念品として作成することです。
過去の経験を整理し、人生の道のりを一つの形にまとめる作業は、自分自身との対話であり、自己発見の旅そのものです。
この過程で、経験の中に埋もれていた価値観や強み、弱点を再発見できるでしょう。
自分の「軸」となる考え方に気づき、これからの生き方を定めるきっかけにもなります。
この目的の場合、形式にとらわれることなく、自由な発想で創作を楽しめます。
二つ目は、家族や子孫へ生きた証を残すことです。
どのような時代に生まれ、何を思い、どう生きてきたのかを記した自分史は、家族の源流を知るための貴重な資料となります。
普段は照れくさくて語れない親の人生や仕事について知ってもらうことは、世代間の隔たりを埋める架け橋にもなるでしょう。
感謝の言葉や伝えたい想いを残すことで、その温もりは時代を超えて伝わります。
三つ目は、世間一般へ自身の物語を伝えることです。
自分の生き様や時代・考えの変遷を知ってもらいたい、自分が得た知識や経験を伝えたい、といった場合に有効です。
不特定多数の方に向けた書籍となるため、記載内容や表現には特に注意が必要です。
読者の心に響くような構成や表現を工夫し、客観的かつ丁寧に記述することが求められます。
目的が定まったら、いよいよ具体的な作業に入ります。
ただ、白紙を前にいきなり文章を書き始めるのは難しいもの。まずは骨格となる「人生の年表」を作ることをおすすめします。
年表は記憶を整理し、物語にしっかりした構造を与える第一歩です。
ノートや大きな紙、あるいは使い慣れた表計算ソフトを用意し、縦軸に「西暦」「年齢」「その時の立場(学生・社会人など)」といった時間を示す項目を設けます。
次に、それぞれの年代で起こった社会的な出来事(たとえば大きな事件・事故、流行、記録的な災害など)を書き加えます。
これは個人の記憶を呼び覚ます強力なきっかけになります。
そして、その時間軸に沿って自身の主要な出来事を書き出していきます。
誕生、入学、卒業、就職、結婚、家族の出来事、引っ越し、趣味や旅行など、思い出せることを一つずつ記入してください。
この段階では深い分析や装飾は不要です。成功も失敗も、肯定的・否定的な感情も、ありのままに書き出すことが大切です。
記憶だけでは心もとない場合は、古い日記や手帳、写真・アルバム、手紙、通知表や各種成績の記録などを手元に集めましょう。これらは当時の空気感を運んでくれる情報の宝庫です。
また、自身の視点だけでは物語は一面的になりがちです。可能であれば、ご家族や旧友など近しい人に話を聞くこともおすすめします。
忘れてしまった出来事や、自分では気づかなかった側面を思い出させてくれるかもしれません。
主要な出来事が並んだ年表ができたら、次はそれを文章へ。
自分史に決まった形式はなく、さまざまな表現方法があります。
最も一般的で分かりやすいのは、誕生から現在までを時間の流れに沿って語る年代順の構成です。
成長の軌跡が明確になり、読者も話を追いやすいでしょう。
人生の中から特に印象深い出来事を選び、それぞれを一つのまとまりとして描くエピソード集の形式も有効です。
必ずしも時系列にこだわらず、最も伝えたいことに焦点を当てられます。
また、「私の仕事人生」「趣味と共に歩んだ道」など、人生の特定の側面に絞って全体を構成するテーマ中心の書き方もあります。
伝えたいことが明確な場合に効果的で、読み手に強い印象を残せます。
文章が得意でないと感じる方は、写真主体+短い説明文という方法も。
1枚の写真が、多くの言葉より雄弁に当時を物語ってくれることがあります。
家族と共有するアルバムのような、温かい一冊に仕上がるでしょう。
どの構成でも、自分史を魅力的にする鍵は、単なる事実の報告で終わらせないことです。
「何が起こったか」だけでなく、その時に「どう感じたか」「何を考えていたか」、そして「なぜその行動を選んだのか」という内面を丁寧に描きましょう。
例えば「大学で演劇部に入った」という事実だけでなく、なぜ演劇に惹かれたのかを書いてみてください。
挑戦したかったのか、憧れの先輩がいたのか、あるいは何かから逃れたかったのか。動機を掘り下げることで、物語に深みが生まれます。
一つの行動に対して「なぜ?」と自問を重ねる方法は、根底にある動機や価値観にたどり着くための有効な手段です。
また、自分の性格を表す場合は「私は責任感のある人間です」と断言するよりも、その責任感を発揮した具体的な場面を物語として語りましょう。そうすることで言葉に説得力と現実味が生まれます。
いつ・どこで・誰が・何をしたかを思い浮かべ、読者がその場にいるかのような臨場感で描くことを心がけてください。
初稿を書き終えたら、いったん数日から一週間ほど原稿から離れてみましょう。
新鮮な視点で読み返すことで、文章の不自然な点や誤りに気づきやすくなります。声に出して読むのも、流れを確かめる良い方法です。
信頼できる友人や家族に読んでもらい、感想を聞くことも非常に重要です。
自分では気づかなかった魅力や、分かりにくい部分を指摘してもらえるかもしれません。
すべての意見を受け入れる必要はありませんが、客観的な視点は作品をより良く磨き上げてくれます。
完成した自分史は、あなただけの大切な宝物です。
近年は、家族や親しい人のために数部だけ印刷して本に仕立てることも、少部数だけ販売することも、手軽にできるようになりました。
電子書籍として作成し、データを共有することもできます。
どのような形であれ、あなたの生きた証は、あなた自身とあなたの愛する人々にとって、かけがえのない贈り物となるでしょう。
自分史の作成は、過去との対話であり、自己を再発見する旅です。
その筆を執るのに、特別な資格は何もいりません。あなたにしか書けない唯一無二の物語を、どうか恐れずに紡いでみてください。
書き終えたとき、きっと過去の自分を愛おしみ、未来へ向かう新たな力を得ているはずです。
「自分史を書いてみたいと思っても、何から手をつけてよいか分からない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
そんな皆様を応援するため、自分史作りを一歩一歩、具体的に進められる書籍『「お手軽自分史出版」かんたん書き方ガイド』をご用意しました。
本書は「誕生時のこと」「家族構成」「幼少期」「学生時代」「結婚」「趣味」……といった章ごとに構成されています。
各項目に用意された質問や文例に沿って書き進めるだけで、自然とあなただけの一冊が完成します。
今回、この『「お手軽自分史出版」かんたん書き方ガイド』を皆様に贈呈いたします。
在庫には限りがございますので、この機会をどうぞお見逃しなく。
この機会に、ご自身の物語を形にする第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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